「新卒採用で、なかなか求める人材からの応募がない…」 「内定を出しても、他社に行かれてしまい辞退が続く」 「せっかく採用したのに、社風に合わず早期に離職してしまった」

中小企業の経営者や人事担当者の皆様にとって、このようなお悩みは尽きないのではないでしょうか。その根本的な原因は、もしかすると「採用したい人物像が曖昧なこと」にあるのかもしれません。

 

そこで本記事では、採用活動の成功の鍵を握る「ペルソナ設計」について、分かりやすく解説します。

 

 

新卒採用におけるペルソナとは?

 

まず、新卒採用における「ペルソナ」とは何か、基本的な定義から確認しましょう。

ペルソナとは、企業が採用したい理想の人物像を、あたかも実在する人物かのように詳細に設定したものです。

 

「ターゲット」との違い

 

「ペルソナ」と似た言葉に「ターゲット」があります。両者の違いを理解することが、ペルソナ設計の第一歩です。

 

  • ターゲット:年齢や性別、所属などで区切った「集団(層)」のこと。
    • 例:「首都圏在住で、MARCH以上の大学に通う文系の学生」
  • ペルソナ:ターゲット層の中から、さらに一人の人物像まで掘り下げた「個人」のこと。
    • 例:「〇〇大学経済学部の3年生、高橋健太さん。性格は誠実で、飲食店のアルバイトでリーダーを経験。就職活動では、企業の規模よりも自身の成長環境を重視している…」

ターゲット設定だけでは、人物像がぼんやりとしてしまい、採用に関わるメンバー間での認識にもズレが生じがちです。一方、ペルソナを設計することで、採用したい人物の価値観や行動、人柄までを具体的に共有できるようになります。

 

なぜ今、新卒採用でペルソナ設計が重要なのか?

 

近年、ペルソナ設計の重要性はますます高まっています。その背景には、採用市場の変化と学生の価値観の多様化があります。

少子化による労働人口の減少で、採用市場は学生優位の「売り手市場」が続いています。企業は学生から「選ばれる」立場となり、画一的なアプローチでは学生の心に響かなくなりました。

だからこそ、自社が本当に求める一人の人物(ペルソナ)に深く刺さるメッセージを発信し、「この会社こそが自分に合っている」と感じてもらう必要があるのです。ペルソナ設計は、数ある企業の中から自社を選んでもらうための、強力な羅針盤となります。

 

また、ペルソナを設計していないことで、採用活動におけるミスマッチが発生したり、本当に採用したい人材が集まらないという状態になることもあります。
新卒採用における辞退や早期離職を防ぐには、ペルソナ設計が非常に大事な要素となります。

 

【関連記事】新卒採用でミスマッチが起こる理由とは?原因と対策を解説

 

 

新卒採用でペルソナを設計する3つのメリット

 

ペルソナを設計することで、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは代表的な3つのメリットをご紹介します。

 

採用担当者間で採用したい人材の認識のズレがなくなる

 

「積極性のある学生が欲しい」という言葉を聞いて、どんな学生を思い浮かべますか?

 

  • Aさん:リーダーシップを発揮して、周りを巻き込める学生
  • Bさん:指示を待つのではなく、自ら課題を見つけて行動できる学生

 

このように、同じ言葉でも人によって解釈は異なります。この認識のズレが、面接での評価のバラつきや、採用のミスマッチにつながるのです。

ペルソナとして具体的な人物像を共有することで、社内共通の「求める人物像」が明確になり、選考基準が統一されます。これにより、面接官による評価のブレを防ぎ、採用活動の質を高めることができます。

 

学生に響く効果的なアプローチが可能になる

 

ペルソナを設計すると、その人物が「どのような情報を」「どこで」「どのように」収集するのかが見えてきます。

例えば、ペルソナが「企業のリアルな雰囲気を知るために、Instagramや企業の採用サイトを重視している」のであれば、大手就活サイトへの広告出稿よりも、SNS運用や採用サイトのコンテンツ充実に力を入れるべき、という判断ができます。

 

このように、ペルソナの行動や価値観に合わせて採用広報の戦略を立てることで、無駄なコストを削減し、効果的にメッセージを届けることが可能になります

 

入社後のミスマッチを防ぎ、定着率向上につながる

 

採用活動における最大の悲劇は、時間とコストをかけて採用した人材が、早期に離職してしまうことです。

ペルソナ設計では、スキルや経験だけでなく、その人物の価値観や働き方の好み、キャリアプランといった内面まで深く掘り下げます。これにより、自社の理念や文化に本当にフィットする人材を見極めやすくなります。

 

結果として、入社後の「こんなはずじゃなかった」というミスマッチを減らし、社員の定着率向上、ひいては採用コストの最適化にも貢献します。

 

 

新卒採用におけるペルソナの作り方

 

それでは、実際にどうやってペルソナを作成すればよいのでしょうか。以下の5つのステップに沿って進めることで、誰でも実践的なペルソナを作成できます。

 

自社の現状分析と採用目的の明確化

 

まずは自社について深く理解することから始めます。

  • 自社の経営理念、ビジョン
  • 事業内容、強み・弱み
  • 社風、組織文化、社員の平均年齢
  • 「なぜ、何のために新卒を採用するのか?」(例:次世代リーダーの育成、組織の活性化)

 

これらの情報を整理し、採用活動の「軸」を明確にしましょう。

 

社内のハイパフォーマー分析(ヒアリング)

 

次に、社内で活躍している若手社員(ハイパフォーマー)や、その上司にヒアリングを行います。彼らこそが、ペルソナのモデルとなる「生きた情報源」です。

 

<ヒアリング項目例>

  • なぜこの会社に入社したのか?(入社の決め手)
  • 仕事のどんな点にやりがいを感じるか?
  • 仕事をする上で大切にしている価値観は何か?
  • どんな性格、行動特性が共通しているか?(上司への質問)

 

採用市場のリアルな情報収集

 

社内の情報だけでなく、社外の客観的な情報も収集します。

 

  • 公的機関の調査データ:独立行政法人 労働政策研究・研修機構などが発表する就職活動に関する調査
  • 学生のリアルな声:ターゲット学生が利用するSNS(X, Instagramなど)、就活口コミサイト

 

これらの情報から、「今どきの学生」のリアルな価値観や悩みをインプットします。

 

ペルソナ項目の設定と人物像の具体化

 

集めた情報を基に、具体的なペルソナのプロフィールを埋めていきます。項目を埋めるだけでなく、その人物の背景にあるストーリーや感情まで想像を膨らませて、血の通った人物像に仕上げるのがコツです。 (具体的な項目は、次の章で詳しく解説します。)

 

関係者への共有と継続的なブラッシュアップ

 

完成したペルソナは、経営層から人事、現場の社員まで、採用に関わる全員で必ず共有しましょう。目指すべき人物像が「自分ごと」になったとき、全社一丸となった採用活動が実現します。

また、一度作って終わりではありません。採用活動を進める中で得た気づきや、変化する市場に合わせて、定期的にペルソナを見直し、アップデートしていくことが重要です。

 

 

新卒採用ペルソナに盛り込むべき項目例

 

ここでは、ペルソナ設計に使える具体的な項目テンプレートと、中小企業を志望する学生のペルソナ記入例をご紹介します。

 

【ペルソナ設定テンプレート】

カテゴリ:項目
基本情報:氏名、年齢、性別、大学・学部・専攻、居住地、写真やイラスト
パーソナリティ:性格、価値観(何を大切にするか)、趣味・特技、強み・弱み
ライフスタイル:情報収集の方法(Webサイト、SNSなど)、休日の過ごし方
就職活動:就活の軸、企業選びのポイント、キャリアプラン、年収への考え方、就活の悩み

 

【ペルソナ記入例】

  • 氏名:高橋 健太(たかはし けんた)
  • 大学:地方国公立大学 経済学部 3年生
  • 写真
  • 性格:真面目で誠実。サークル(地域活性化ボランティア)では副部長として、メンバーの意見調整や企画の進行管理を担当。派手さはないが、粘り強く物事に取り組むタイプ。
  • 価値観:誰かの役に立つことに喜びを感じる。安定よりも、自身の成長を実感できる環境を重視。
  • 情報収集:大手就活サイトと並行し、企業の採用サイトやSNS(X, Wantedly)で社員のリアルな声や社風をチェックしている。
  • 就活の軸
    1. 若いうちから裁量権を持って働けること
    2. 経営者との距離が近く、事業全体を見渡せること
    3. 地域社会に貢献できる事業内容であること
  • 就活の悩み:「大手企業も見たほうが良いのでは」という親の意見と、「中小企業で早く成長したい」という自分の気持ちの間で少し揺れている。会社の知名度よりも、自分の価値観に合うかどうかを慎重に見極めたい。

 

 

設計したペルソナを新卒採用活動の「武器」にする方法

 

ペルソナは、作って終わりでは意味がありません。採用活動のあらゆる場面で「武器」として活用していきましょう。

 

採用広報(求人票・採用サイト)

  • Before:抽象的な言葉が並ぶ。「成長できる環境です!」「風通しの良い社風です!」
  • After:ペルソナ(高橋くん)に語りかける。「入社3年でプロジェクトリーダーへ。大手にはないスピード感で成長しませんか?」「社長との月1面談で、直接経営視点を学べます」など、具体的な事実を基に、ペルソナが魅力に感じる言葉で伝える。

会社説明会・イベント

  • Before:どの企業も同じような、一方的な会社概要の説明。
  • After:ペルソナ(高橋くん)が参加したいと思う企画を立てる。「若手社員との座談会」で、彼が気になっている「リアルな仕事内容や成長環境」について話す時間を長く設ける。

面接

  • Before:「ガクチカは?」「自己PRは?」といった定番の質問。
  • After:ペルソナ(高橋くん)の価値観や思考力を見極める質問をする。「あなたが仕事で『誰かの役に立った』と感じるのはどんな時ですか?」「当社の事業を通じて、どのように地域貢献ができると思いますか?」など、より深く候補者を理解するための対話が可能になる。

 

 

新卒採用のペルソナ設計で陥りがちな3つの注意点と対策

 

最後に、ペルソナ設計で失敗しないための注意点を3つお伝えします。

「理想」を詰め込みすぎた人物像を作る

求める要素をすべて詰め込み、現実には存在しないような「完璧超人」のペルソナを作ってしまうケースです。これでは、採用基準が過剰に高くなり、誰一人として当てはまらない…という事態になりかねません。必ず、ヒアリングやデータに基づいた、現実的な人物像を心がけましょう。

思い込みや先入観だけで作る

「最近の若者は〇〇だ」「男の子はこう、女の子はこう」といった、採用担当者の思い込みや古い価値観でペルソナを作るのは絶対にやめましょう。必ず客観的な事実に基づいて作成し、多様な人材の可能性を狭めないように注意が必要です。

一度作って「おしまい」にする

採用市場のトレンドや学生の価値観は、年々変化します。3年前に作ったペルソナが、今も有効とは限りません。採用活動を行う中で「最近の学生は、ペルソナと少し違うな」と感じたら、それは見直しのサインです。定期的なアップデートを忘れないようにしましょう。それが、着実な成功への近道です。

 

 

新卒採用のペルソナ設計から採用成功まで「jinji+」にお任せください

 

本記事では、新卒採用におけるペルソナ設計の重要性から、具体的な作り方、活用法までを解説しました。

 

  • ペルソナとは、採用したい理想の個人像
  • メリットは「認識統一」「効果的な広報」「ミスマッチ防止」
  • 5つのステップで、誰でも作成できる
  • 作ったペルソナは、採用活動のあらゆる場面で活用する

 

ペルソナ設計は、採用の成功確率を高めるだけでなく、入社後の社員の活躍や定着にもつながる、いわば「未来への投資」です。

 

しかし、

「自社に合ったペルソナが具体的に分からない」

「日々の業務に追われ、採用活動にまで手が回らない」

 

このようにお考えの人事ご担当者様も多いのではないでしょうか。

 

そのようなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ弊社の「jinji+(ジンジプラス)」にご相談ください。

 

 

「jinji+」採用から会社を強くする

 

 

「jinji+」は、単なる採用支援にとどまりません。戦略の立案から、ターゲットに合わせた最適な手法のご提案、実行、効果測定、そしてスカウト活用まで、採用活動全体を一気通貫でサポートいたします。

お客様一社一社の状況や課題を丁寧にヒアリングし、貴社の状況に合わせた採用プランをご提案します。

 

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