「コストと時間をかけて採用した、未来を担うはずの新卒社員が、あっけなく辞めてしまった…」

多くの経営者や人事担当者様が、一度はこのような苦い経験をされているのではないでしょうか。手塩にかけて育てようとした人材の離職は、単に「1人分の労働力が減る」以上の深刻な影響を会社に与える、重要な経営課題です。

しかし、嘆いてばかりでは何も解決しません。なぜ、期待をかけた新卒社員は会社を去ってしまうのでしょうか。

本記事では、新卒社員の離職理由を紐解き、離職を防いで社員の定着率を向上させるための具体的な対策まで、網羅的に解説します。

 

 

新卒社員の離職率とは?

 

 

感覚論で語るのではなく、まずは客観的なデータから現状を把握しましょう。

 

大卒就職後3年以内の離職率は約3割

 

厚生労働省が公表した最新の「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」によると、大学卒業後に就職した新卒社員のうち、3年以内に離職した人の割合は34.9%に上ります。

これは、およそ3人に1人が3年以内に最初の会社を辞めている計算です。「石の上にも三年」という言葉は、もはや過去のものなのかもしれません。この傾向はここ数年大きく変わっておらず、多くの企業が直面している共通の課題であることがわかります。

また、この離職率を企業の規模別に見ると、さらに重要な事実が見えてきます。

  • 1,000人以上: 28.2%
  • 100~499人: 35.2%
  • 30~99人: 42.4%
  • 5~29人: 52.7%
  • 5人未満: 59.1%

※大学卒業者のデータ

このように、企業の規模が小さいほど、離職率が高くなる傾向が顕著です。教育制度や福利厚生が整っている大企業に比べ、リソースが限られる中小企業にとって、新卒の定着はより切実な課題であると言えるでしょう。

ターゲット顧客に飲食業の方も多いと思いますが、産業別に見ると、「宿泊業、飲食サービス業」(56.6%)や「生活関連サービス業、娯楽業」(53.7%)は特に高い離職率となっています。ビジネスモデル上、労働時間や休日が不規則になりがちなことが一因と考えられます。

(引用元:新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)

 

1人辞めると数百万円の損失?新卒の早期離職が会社に与える3つのダメージ

 

「若いうちは転職も仕方ない」と軽く考えてはいけません。新卒社員1人の離職は、企業にとって計り知れないダメージとなります。

採用・育成にかかった「金銭的コスト」の損失

まず挙げられるのが、目に見える金銭的な損失です。

  • 採用コスト: 求人広告費、人材紹介会社への手数料、会社説明会の費用、採用担当者の人件費など
  • 育成コスト: 研修費用、OJT担当者の人件費、新入社員に支払った給与・社会保険料など

これらを合計すると、新卒社員1人が離職した場合の損失額は、数百万円に上るとも言われています。このコストが、新たな採用活動のために再び必要になるのです。

 

【関連記事】新卒採用のコストはどのくらいかかる?費用対効果を高めるポイントとコスト削減の方法を解説

 

 

既存社員のモチベーション低下という「組織的損失」

お金だけの問題ではありません。1人離職者が出ると、そのしわ寄せは既存社員に及びます。

  • 業務の穴埋めによる、残業時間の増加
  • 手塩にかけて指導した後輩が辞めたことによる、徒労感やモチベーションの低下
  • 「この会社は何か問題があるのでは?」という、他の社員への心理的な動揺

このような組織的な損失は、じわじわと会社全体の生産性を蝕んでいきます。

 

「辞めやすい会社」という「ブランドイメージの毀損」

退職した社員が、口コミサイトやSNSでネガティブな情報を発信するリスクもあります。「あの会社はすぐ人が辞めるらしい」という評判が立てば、今後の採用活動はさらに困難になります。これは、企業の採用ブランドが大きく傷つくことを意味します。

 

なぜ期待の新卒は辞めてしまうのか?7つのリアルな離職理由

 

では、なぜ新卒社員はこれらのダメージを会社に残してまで、離職を決意するのでしょうか。その背景には、複合的な理由が存在します。

 

仕事内容のミスマッチ「こんなはずじゃなかった」

入社前に抱いていた華やかなイメージと、実際の地道な業務内容とのギャップ。これは、早期離職の最大の理由と言えます。

 

労働時間・休日への不満「プライベートを大切にしたい」

長時間労働や休日出勤が常態化している環境は、現代の若者の価値観に合いません。ワークライフバランスを重視する傾向は年々強まっています。

 

人間関係の悩み「上司・先輩とうまくいかない」

特に社会人経験の少ない新卒にとって、相談しにくい、高圧的、放置されるといった上司・先輩との関係性は、精神的に大きなストレスとなります。

 

給与・評価への不満「正当に評価されていない」

給与額そのものだけでなく、「頑張りが評価に反映されない」「評価基準が不透明」といった公平性への不満も、離職の引き金になります。

 

キャリア成長への不安「この会社で成長できるのか」

「このままここで働き続けても、スキルは身につくのだろうか」「自分のキャリアパスが見えない」といった成長実感の欠如は、優秀な人材ほど敏感に感じ取ります。

 

社風・文化への不適合「会社の雰囲気が合わない」

朝礼のスタイル、飲み会の頻度、コミュニケーションの取り方など、言語化しにくい「空気感」が合わないことも、日々のストレスとして蓄積されます。

 

心身の健康問題

過度なプレッシャーや長時間労働が原因で、心身のバランスを崩してしまうケースも少なくありません。健康を損ねては元も子もないと、離職を決断します。

 

 

離職を考える新卒社員の危険なサイン5選

 

離職を防ぐには、その「前兆」をいかに早く察知できるかが鍵となります。以下のようなサインが見られたら、注意深くフォローしましょう。

 

勤怠の乱れ

これまで無かった遅刻や欠勤、早退が増え始めたら危険信号です。

 

コミュニケーションの変化

明らかに口数が減る、挨拶の声が小さくなる、ランチや飲み会を避けるようになるといった変化は、心に壁を作っている証拠かもしれません。

 

仕事への姿勢の変化

表情が暗く、ボーっとしている時間が増える。単純なミスが多くなる。以前は積極的にしていた質問をしなくなる。これらは意欲低下のサインです。

 

会社の愚痴や批判が増える

同僚や、時には社外の人に会社の不満を漏らすようになります。

 

将来やキャリアに関する話題を避けるようになる

以前は夢を語っていたのに、将来の話を振ると口ごもる。これは、その会社で働く未来を描けなくなっている可能性があります。

 

新卒の早期離職を防ぐ4つの対策

 

原因と兆候がわかったところで、いよいよ具体的な対策です。離職防止は、採用活動からすでにはじまっています。

 

 

【採用広報】正直な情報提供で期待値コントロールを

ミスマッチを防ぐ最大のポイントは、「入社後のギャップ」をなくすことです。そのためには、採用広報の段階で「RJP(Realistic Job Preview:現実的な仕事情報)」を意識することが重要です。

  • 仕事のやりがいや魅力だけでなく、厳しさや大変な部分も正直に伝える。
  • キラキラした社員だけでなく、様々な立場の社員に話を聞く機会を設ける。
  • 「うちは楽な仕事じゃないけど、こんな成長ができる」というメッセージで、覚悟を持った人材からの応募を促す。

 

【選考】スキルよりも「価値観のマッチング」を重視

基本的なスキルは入社後にいくらでも育成できます。しかし、企業文化や働く上での価値観の不一致を後から修正するのは非常に困難です。

面接では、「どんな時にやりがいを感じますか?」「チームで働く上で何を大切にしますか?」といった質問を通じて、スキルだけでなく個人の価値観が自社と合っているかを丁寧に見極めましょう。

 

【入社直後】手厚いオンボーディングで孤独を防ぐ

新入社員が最も不安を感じる入社直後の期間に、いかにスムーズに組織に着陸(オンボーディング)させられるかが定着の鍵を握ります。

  • メンター制度の導入
    仕事の悩みからプライベートの相談までできる、年齢の近い先輩社員を「相談役」としてつける。
  • 定期的な研修
    スキル研修だけでなく、企業理念や歴史を学ぶ機会を設け、帰属意識を高める。
  • 歓迎ムードの醸成
    経営層や他部署の社員も巻き込み、会社全体で新人を歓迎している雰囲気をつくる。

 

【配属後】対話を通じてキャリア形成を支援

配属してOJT任せ、は最も危険なパターンです。放置されていると感じさせないために、上司による継続的な関与が不可欠です。

特に有効なのが、定期的な「1on1ミーティング」の実施です。これは評価面談とは異なり、部下のための時間です。業務の進捗確認だけでなく、困っていること、挑戦したいこと、将来のキャリアについて対話し、会社が君の成長を応援している、というメッセージを伝え続けましょう。

 

 

早期離職のミスマッチを防ぐ新卒採用活動なら「jinji+」にお任せください

 

本記事では、新卒社員の離職について、データに基づいた現状と原因、そして具体的な対策までを解説してきました。

新卒の離職は、様々な要因が複雑に絡み合って発生します。そしてその対策は、採用広報から選考、入社後、配属後まで、一貫した取り組みが求められます。

 

しかし、

「新卒の離職対策について、何から始めたら良いか分からない」

「新卒採用について、何から手をつけたら良いかプロの意見が聞きたい」

このようにお考えの人事ご担当者様も多いのではないでしょうか。

 

そのようなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ弊社の「jinji+(ジンジプラス)」にご相談ください。

 

 

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